国土交通省が打ち出した「ドライバー異常時対応システム」のガイドラインとは?

最近はクルマの自動運転が話題になっていますが、完全な自動運転が可能になるにはまだまだ時間がかかるに違いありません。

完全な自動運転が実現するまでの間は、ドライバーがしっかりと意識を保った状態でハンドルを握ることが大前提となります。

そのため、走行中にドライバーの意識が正常な状態を保てなくなったとたん、クルマは制御できなくなって危険に直面することになります。

運転中の「居眠り」や「疾病による発作」などによって、重大な交通事故を起こしてしまうケースは決して稀ではありません。

そのため国土交通省は、運転中のドライバーの体調が急変したときの対策として、「ドライバー異常時対応システム」のガイドラインを策定しました。

ここでは、「ドライバー異常時対応システム」というのが、どういったシステムなのかについて解説をしてみたいと思います。

居眠り運転で処理される事故のなかには疾病による意識喪失もかなり含まれる

運転中のドライバーにはさまざまなストレスが発生するために、通常のときにくらべて健康状態が急変する可能性が高くなります。

信号無視による事故や後方からの追突事故に対して、警察は「居眠り運転」との判断を下してしまうことが多いです。

しかし、「居眠り運転」で処理された事故のなかには、体調の急変による意識の喪失が原因となっているケースがかなりあるといわれています。

ドライバーが死亡してしまっている場合には、本人に原因を聞くことができないために、「居眠り運転」で処理をしてしまうことになります。

人間が突然意識を失ってしまう可能性のある疾病というのは、思った以上にたくさんあります。

心筋梗塞や脳梗塞、てんかん、低血糖、貧血、不整脈、喘息などが代表的なものですが、これらの病気は誰にでも発症する可能性があるわけです。

そういった病気による発作がたまたま運転中に起きたりすると、非常に危険な状態になってしまうわけです。

国土交通省が策定した「ドライバー異常時対応システム」のガイドラインは、こうした疾病によって起こる走行中の異常を感知して、クルマを安全に停車させようとするものです。

ドライバー異常時対応システムによってクルマを安全に停車させる3つの方法

国土交通省が発表したドライバー異常時対応システムのガイドラインによりますと、走行中に異常がみられたクルマを停止させる方法として、次の3つの方法が紹介されています。

システムによって走行異常を自動で検知する

1つめは、運転者が完全に意識を失ってしまったようなときに対応するシステムで、異常を自動的に検知して停車させる方法です。

運転席に向けられたカメラなどのさまざまなセンサーを利用して、運転手の姿勢や視線などに異常がみられたときに、ゆるやかにブレーキ制御を行ってクルマを走行している車線上に自動停車させるわけです。

ドライバーがまだ意識のあるうちに自分で異常を感じて停車させる方法

2つめは、ドライバー自身が自分の体に異常を感じてまだ意識のあるうちに、自分で停車ボタンを押すという方法です。

疾病による発作が起きたとしても、瞬間的に意識を失うということは滅多にないために、自分で停止ボタンを押すことは十分に可能だと思われます。

自分で停止ボタンを押した場合も、自動停止のときと同様にゆるやかにブレーキ制御を行ってクルマを自動停車させます。

ドライバーの代わりに同乗者が停止ボタンを押す方法

3つめは、ドライバーに異常がみられたときに、ドライバー本人に代わって同乗者がボタンを押してクルマを自動停車させるというものです。

この3つめのシステムは、タクシーやバスなどのドライバーが意識を失ってしまったようなときに、特に有効です。

もちろん、タクシーやバスだけではなく、ガイドラインでは乗用車に装備することも前提となっています。

また、タクシーやバスに第三者によって自動停止させることのできるボタンがついていると、イタズラで押される可能性もありますが、その点に関してもしっかりと対策が練られているようです。

あきらかなイタズラの場合には、ドライバーの判断でそのまま運転を続けることのできるに自動停止システムをカットするわけです。

ドライバー異常時対応システムは技術的にそれほど難しいことではない

運転者に万が一のことがあったときのための「ドライバー異常時対応システム」ですが、技術的にはそれほどハードルが高いものではありません。

現在の市販車の多くには、電子スロットルやブレーキペダルを踏まなくてもブレーキの油圧を制御できるシステム(横滑り防止装置)が搭載されていますので、あとはそれらを使って自動停止させるための制御装置や、異常を感知するためのセンサーを取り付ければいいだけです。

必要なセンサーは、ドライバーを監視するカメラ、車線逸脱を監視するカメラ、前方の障害物を感知するカメラやレーダーなどです。

最近では、運転者向けのカメラ以外はすでに搭載されているクルマも多いですから、そういったクルマであればわずかなコストで「ドライバー異常時対応システム」を構築できるに違いありません。

レクサスLSに搭載されているドライバー異常時停車支援システム

2017年10月に発売されたレクサスのフラッグシップモデルであるLSには、「ドライバー異常時停車支援システム」が搭載されています。

このシステムは、「レーントレーシングアシスト」が作動しているときに、ドライバーの異常を感知すると車線内にクルマを安全に停車させるというものです。

「レーントレーシングアシスト」というのは、搭載されたカメラを使って道路中の白線を感知して、車線内を安全に走行させるシステムです。

「レーントレーシングアシスト」を作動中に、ドライバーの無操作が継続していると判断すると、第1段階として音と表示でドライバーに対して警告を行い、ゆるやかに減速をします。

それでもドラーバーの無操作状態が続くようだと、第2段階としてハザードランプとクラクションによって周囲の車に異常があることを知らせます。

その後、ゆっくりと減速して車線内にクルマを自動停止させます。

こうすることで、自爆事故を防止すると同時に、周囲のクルマを事故に巻き込まないように、クルマを安全に停止させることができるわけです。

商用車として世界初のドライバー異常時対応システム採用の日野セレガ

大型の観光バスである日野セレガは、商用車としては世界初となる「ドライバー異常時対応システム」を採用しています。

大型バスの場合、運転中のドライバーが意識を失ったりすると、大事故につながる可能性があります。

実際に、バスの運転手の意識がないことに気がついた乗客が、あわててハンドルとブレーキを操作してバスを停車させるといったようなことは過去に何度も起きています。

バスの運転手は1人で、飛行機のように副操縦士はいませんから、運転手が気を失うと制御不能になります。

大型バスに「ドライバー異常時対応システム」が採用されることになれば、乗客は大きな安心感を得ることができます。

ドライバーの異常に気がついても、慣れない大型バスのハンドルやブレーキを操作して停車させる必要はなく、客席の上部に取り付けられた自動停車ボタンを押すことでバスはゆっくりと止まってくれます。

さらに日野セレガの場合、国土交通省のガイドラインに準拠したシステムになっているだけではなく、システムが作動したことを自動的にメールでバス会社に知らせる仕組みも搭載しています。

このメールによって、バス会社ではシステムが動作した時刻と車両の位置情報を知ることができます。

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